2013年2月27日水曜日

日本のソフトパワーについて

ソフトパワーという言葉がある。
ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が1990年代に提起した概念で、ハードパワーという言葉と対になっている。

軍事力や経済力などで自国の意思を他国に強制する力をハードパワーと言い、文化や価値観などで他国に影響力を及ぼす力をソフトパワーという。
よく出てくる例だが第二次世界大戦後、映画などで描かれる豊かな生活や自由な思想などは、日常生活に困窮していた我が国の民衆を魅了した。

21世紀に入り、中国とロシアがこのソフトパワーの重要性に気づき、ソフトパワーの強化を図っているという。ところがそのジョセフ・ナイ教授が中国とロシアは勘違いしていると指摘している。

翻って我が日本でもクール・ジャパン戦略と銘打って官民上げて漫画・アニメ・原宿ファッション・J-POPなどのコンテンツ産業や寿司・ラーメン・日本食等の食品産業の海外展開、「おもてなし」と表現される国内観光を支援するという。GNPを押し上げるために大切なことではあるが。。。中国・ロシア程ではないにしろ、これもちょっと違和感がある。

私はソフトパワーの本質は、他国にも通用する普遍的な価値を実現し、他国の人々から尊敬され憧れられる国・存在となることだと思っている。
その意味で、戦後の荒廃から不死鳥のように甦り、60年以上戦争を起こさず、実質的に世界の最長寿国で、失われた20年でも失業者が溢れ返っているわけではなく、3.11後の秩序だって協力的な国民性、女性が一人で夜間外出できる安全性、偽札や食品偽造を心配する必要がなく、道路がきれいで、自然が美しく、食べ物がおいしい日本は、十分にその資格があると思うのだ。(こう書くと理想郷のようだが、当然そんなことはない。)

要はこの様な日本をどう世界にアピールするかなのだが、下手すれば単なる「自慢シイ」になってしまうので、注意が必要だ。

「礼楽(れいがく)前(さき)に馳せて真道(しんどう)後に啓く」という言葉がある。音楽や芸術が最初に受け入れられ、その後その基盤となる思想・価値観が啓蒙されるという意味だ。クール・ジャパン戦略が、これを意識していたならば、たいしたものだ。

またもうひとつ大切なことは、影響を及ぼそうとするその国に、貢献する・役に立つ・ためになるということが大切だ。今風の言葉で言えばWin-Win関係というやつだ。一方的に搾取するのでは、帝国主義時代の植民地と変わらない。

世界には様々な宗教・国民性・歴史・政治体制・地理的条件等を持つ国がある。その様な国々から憧れられるような普遍的な価値を説明し、納得させることができるか。それが日本のソフトパワーを拡大する鍵だと私は思っている。

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